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読書メモ:『カウント•ゼロ』

ウィリアム•ギブスンの『カウント•ゼロ』を読んだ。カッコいいガジェットやアクションと、人間や芸術のあり方への遠大な考察に引き込まれる。昔読んだ前作『ニューロマンサー』より読みやすい。

ニューロマンサーは、よく解らない記述をちょっと読み進めるとタネ明かしされるという書き方が多かった。ナボコフやピンチョンみたいな。カウントゼロにはそれがなく、人名さえ覚えていれば筋は追える。その点電子書籍は(これ誰だっけ?)となったときに(ぼくはよくなる)、検索で戻れるのでいい。

主人公の1人マルリイが大富豪ウィレイクの仕事を受けるのがブリュッセルの事務所。ウィレイクの支配下を「帝国」と表現。コンラッドの『闇の奥』でマーロウが仕事を受けるのもブリュッセルの事務所だ。マルリイがアフリカの神々の一端に関わる暗示か。MarleyとMarlowe、名前も似ている。

『闇の奥』でブリュッセルという地名は出てこないが当時コンゴはベルギー領だったので史実上ブリュッセルだとされている。19世紀のヨーロッパによるアフリカ支配を、 『カウント•ゼロ』では企業が電脳空間を介して繰り返す。

コーネルはどうか知らないけど、20世紀初めのダダはアフリカからインスピレーションを受けている。カウントゼロで、ウィグのいる場所に、レーモン•ルーセルの『ロクス•ソルス』のような、人間の歯を敷き詰めた道が出てくる。アフリカ侵略と、西洋文化へのカウンターと現代美術。

 

カウント・ゼロ (ハヤカワ文庫SF) https://www.amazon.co.jp/dp/B07169GVKK/ref=cm_sw_r_cp_apa_i_TWUADbDHEGD8Z