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思わぬ休暇

先週、ウィルスの影響でドイツは人道的難民受け入れを停止し、今週からはレストランが閉められ、僕は仕事が休みになった。今日はベランダで、前から始めているネギやバジルの栽培をしていた。とりあえず芽が出たので大きなプランターに植え替えたところだ。みんな自宅にこもっているのか、街は静かだ。

 

先月、用事があってひさしぶりに中央駅に行くことがあったのだが、そこで人が倒れるのに出くわした。先月はまだ人が多くてマスクをして歩いている人もいなかった。でもコロナの不安はドイツにもうっすら蔓延していた。

地下鉄のホームからの階段を上がったところで男女とすれ違ったが、すれ違いざまに女のほうが顔から倒れた。顔を床に打ち、鼻と歯から血を流して痙攣している。(てんかん発作かな)と思った。でも男がえらく騒いでいる。女の名前を呼んで、助けてくれ、と。てんかんなら治まるのを待つしかない。発作持ちだと聞かされていないのか。

てんかん発作で気をつけるのは、倒れるときに怪我しないようにすること(これは手遅れ)、痙攣で首をふっているとき床に頭を打ちつけないようにすること(コートのフードがうまくクッションになっていた)、あとは窒息。

女は顔に血まみれの髪がべっとりついていて、僕は窒息しそうと思ってそれを払いのけた。そのときに手に血がついた。駅員が来て「救命医を」と叫び、あたりが騒然としはじめた。僕は何もできないので、消毒ナプキンを買いにその場を離れた。手のべたつきを拭ったあとも、悪いことをした後のような嫌な気分が残った。

この話をその日、かいつまんで書いてTwitter に投稿した。書いてすっきりしたかったのだけど、投稿してすぐまったく知らないアカウント2人に共有(リツイート)された。僕の投稿を読んでいる人は少ないので、こういうことは珍しい。なにかと思ったらそれらのアカウントは 、他の人の書いた、人が倒れたという似たような話をいくつもリツイートしていたのだ。

すぐに消した。

つまり、彼らはウィルスで倒れる人が日本で増えているという証拠を集めているのだ。日本は検査をあまりしていないから、感染者の暗数は比較的大きいだろう。その不安からやっているのだろう。

似たような話で、場で帰りにいっしょになって珍しく会話した同僚が、40代の日本人男性だが、コロナに絡めた中国の陰謀論や古典的なユダヤ陰謀論を熱心に語っていて、気分がふさいだ。

「そんな内政干渉あったら大ニュースですよ」いちおう反論めいたことは言ってみた。

「マスメディアも操作されているんだよ」もちろんそうだろう。

黙示録的な状況をどこかで期待している人たちもいるんだろうと思う。

ペストが蔓延したころ、それを神の罰だとして自分の体を鞭で叩く集団が現れ、一方でユダヤ人排斥が加速したそうだが、今の世相を見ているとさもありなんだ。歴史の本で読んだ、「自らを鞭打つ勇気のない者は」ユダヤ人を攻撃した、というくだりが印象に残っている。

僕の祖父母が90代後半で、まだ健康だ。祖父は施設にいて、風邪などは引いていないがさいきん食が細くなった。もう長くないだろうと父は言っている。とにかくよく食べる人で、胃がんで胃の半分を取ったときも食欲は失わなかった人だから。祖母はウィルス対策のため面会できないことを怒っているらしい。焦る気持ちはあるだろう。

老い先短くても呼吸器関係の死に方はしたくない、と思う。肺炎もだけど、溺死とか誤飲とかも、苦しみが長そう。