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論文紹介:移民増加で犯罪は増えているのか?

先月の30日、なんともやりきれない事件があった。フランクフルト中央駅で、40歳の男が8歳児押し死亡させたという。犯人がエリトリア国籍だということで難民受け入れの是非の議論もしばらく再燃していた。

 

ドイツの駅で8歳児押し死亡させた男、精神鑑定へ 外国籍で3児の父親 写真8枚 国際ニュース:AFPBB News

 

「移民で犯罪が増えているのか」という問いについてドイツの統計を概観した記事が日本語で見つかった。

 

【検証】「ドイツで犯罪が大幅増」 トランプ氏のツイートは事実なのか 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

 

ぼくも統計を探したら別の情報源のものが見つかった。PFD

https://www.bka.de/SharedDocs/Downloads/DE/Publikationen/JahresberichteUndLagebilder/KriminalitaetImKontextVonZuwanderung/kernaussagenZuKriminalitaetImKontextVonZuwanderungIQuartal2019.html;jsessionid=0F6B2CEF9947E40B4FB207F139947E4D.live2302?nn=62336

上記の検証記事と数字は少し違ったが、論旨が変わるほどの違いではなさそうだ。移民がピークに達した2015年には犯罪率が増えたが、そのあと元に戻ったということだ。

 

もっと具体的な事情について法学者で犯罪学者のArthur Kreuzerが2016年に書いていたので紹介する。

http://www.arthurkreuzer.de/KRIMINALISTIK_5_2016_Druckfassung_Flucht.pdf

 

Flüchtlinge und Kriminalität
Ängste - Vorurteile – Fakten
Von Arthur Kreuzer

A Kreuzer - Kriminalistik, 2016 - arthurkreuzer.de

 

難民と犯罪         不安 - 偏見 - 事実

Arthur Kreuzer  著

 

「難民と犯罪」という主題について話すのは学問的なリスクをはらんでいる。それは極端に複雑だからだ。うまく例を選んで特色を浮かび上がらせてしか個々の問題提起はできない。それを通じて誤解を解くことができる。このテーマは偏見が多い。社会的組織や政党や政治家、メディアや議論によって誤って扱われうる。そしてそれは二極化している。

 

I. テーマ一般

議論で使われるどのキーワードにもすでに、言語的、法的な、政治的な、また世界観にかかわる了解や価値観の非常にさまざまな組み合わせに影響されている。 ここで問題にしている呼び名がすでに、もちうる意味やその解釈の複雑さや多様性、さらに重なりあいを示している。私たちは難民、外人、移民、移民背景をもつ人、庇護を求める人、外国人、ここでの合法ないし非合法の滞在者、滞在者、永住移民、第一、第二、第三世代の永住者などについて述べる。

 

II. 亡命と関係する犯罪事件の体系的な分類

 

例を挙げて5つに分類する。

1. 私たちの国での国家や社会、国民への犯行

これは一般の人々が 「難民と犯罪」についての議論で食い違いなくそのものずばりで理解しているものだ。
難民と自国民の犯罪傾向の比較が行われるときに、とくに区別されなければいけないのは、補まった違反者の大部分がいわゆる「法的身分の違反行為」だということで、これは非ドイツ人にしか違反できない。つまり、滞在の違反や、そのときどきの該当する出身地、亡命経路、登録を他の場所にしたという公的文書の違反や不正申告のことだ。他の違反では主に、店などからの窃盗やいかにもありそうな乗車賃不払い、ほかにたとえば緊急通報の誤用などだ。ときにはここで何が許され何が禁止なのかという知識不足がそれらの根底にある。ケルンの大晦日で認知された強奪や性的な侵害も同様だと思われる。「来襲」のような特定の行動パターンも際立つ。「来襲」は、脅すようにふるまう集団に隠れ、見通しのきかない人だかりで、羽目を外していること、騒音、視界の悪さ、狭い場所、不安、酒の酔いに乗じて、ビデオ監視や警官が少ないところを狙って、とくに若い女性が性的なつきまといや強姦や貴重品の強奪に遭う。これはケルンや他の大きな街の駅構内で長く知られていた。似た行動は、「アラブの春」の大きな決起集会においてや、カイロのタハリール広場で「タハラッシュ •ガメオ」 として認知されたらしい。難民の犯した犯罪全般を考察する際には、警察内の専門家らが、ブラウンシュヴァイクの刑事警察長のUlf Küchの行ったような地域の調査に基づき、地域をまたいだBKA(連邦犯罪局)の「状況報告 No.3」の中で次のことを立証している。難民の犯罪性は意外なほど毎回、自国民の比較集団の犯罪性より大きくはならない。ここでさらに考慮すべきことは、外国人らしい印象の人は他の人よりむしろ通報されやすく、したがってその違犯行為の暗数はより少ないということだ。さらにこの比較で注意しないといけないのは、難民は社会福祉の弱い地域から来た若い男性が不釣り合いに多く、そういう人たちは犯罪傾向がより強い人口集団のひとつだということだ。もっともそれでも、調査結果全体でそのような犯罪の件数が全体として明らかに増加したことに変わりはない。それは2015年に大幅にはね上がった難民の数に比例している。

難民の犯罪と区別されるのは「外国人の犯罪」だ。警察の犯罪統計が年間の犯罪容疑者のほぼ30%が「非ドイツ人」だと述べるとき、そこには短期滞在者、旅行者、ビジネスマン、生徒、学生、永住外国人、難民、永住移民、不法滞在者が含まれる。

この関連で2つの特別な現象について述べるべきだろう。一つには、ときおり難民と認められるが、少なくとも戦地から来た保護を求める人ではない外国人の多くがよく制度的に有罪になる。彼らはおもに北アフリカや東欧出身で、以前はユーゴスラビア諸国出身が多かった。彼らは滞在の見通しをほとんど持っていない。その反対にシリア、アフガニスタンイラクの戦争地域などから来る難民は新しい滞在場所を求める動機が強い。彼らは犯罪行為に関して目を引くようなことはめったにない。

もう一つは、広範囲におよぶ犯罪組織だ。最近では、詐欺窃盗や住居押し入り、薬物や武器の売買、上納金の取り立てや違法ギャンブル、強制売春、密輸団体の組織が注目される。彼らは大都市の隔絶した家族構造の中にある氏族に属し、レバノンやモロッコ、南東ヨーロッパ出身の事件関係者をともなう。2000人を超える容疑者が出たデュッセルドルフの「分析計画カサブランカ」や、ごく最近初めて大規模な警察の手入れで容疑者が捕まったベルリンの数多くのアラビア系氏族のことが想起されよう。彼らは今まで擬似司法をもったある種のカウンター社会や「無法地帯」を形成していた。しかし警察データは、黒幕はおもに外国人やかつての永住移民であるものの難民ではないと示している。

 

2. 難民宿泊所での難民の犯行

また難民の犯罪は、見通しがきかないことが多くまとめるのが難しく変動の激しい難民宿泊施設で起きる。違反行為は他の難民に対してがもっとも多く、ときどき職員に対して行われる。お互いに親しくない人間を大勢宿舎させることによるこのような犯罪の起きやすさは、ナチス強制収容所の例でもよく知られている。物質的な緊急性や言い表せないような衛生状況や不信感、プライベート空間の不足、そして生活や滞在の見通しがまったく立たないという条件下で、必要なものを「調達」し、互いに盗んだり暴力的になったりする。若い男性が無防備な女性に対して性的な侵害をすることもある。彼らには特別保護所や施設をいくつかの場所に作らなければいけない。

さらに、報告されている同居人への嫌がらせの事例の理由になっているのが、彼らがマイノリティの地位にいることや異なる民族的、性的、宗教的な指向のために敵意に遭うことで、その際に故郷から持ち越された争いが続けて行われる。たとえばトルコ人クルド人に対してやその逆、異性愛の男性が同性愛の男性に対して、また体系立った被害者アンケートを通して知られたムスリム難民が攻撃した数百の事件では、警備員の犯人もおり、まさに信仰のために迫害され亡命したキリスト教徒やヤズィーディー教徒が被害者になった。さらに広がって施設の職員への言語的、身体的な攻撃にも及んだ。

 

3. 難民に対する犯行

難民やその施設に対する犯罪、つまり犯罪被害者としての難民は亡命に関わる犯罪のもう一つの側面だ。この犯罪はかなりの部分ドイツ人によるものだ。

量的に一番多いのは侮辱やおおっぴらな中傷、挑発、中でもソーシャルネットワークでのものが挙げられる。質的に喫緊なのは、あとでも述べるがすでに挙げた、毎日のように繰り返される難民宿泊所や施設内外での個々の難民への襲撃である。加えて、モスクへの攻撃がある。2016年には4月の終わりまでにもう400件近い攻撃があり、中には宿泊所の放火40件が登録されている。2015年の300件近い攻撃では人が負傷したり危険にさらされたりした。石、爆竹、発燃剤、鉄球、発砲武器、爆発物使われたり、施設が浸水させられた。他には落書きや違法プロパガンダや乱暴行為があった。バウツェンでは見物人が火事を称賛し消火活動を妨害した。フライタールでは好戦的で外国人敵視の「自警団」が猛威をふるった。ミュンヘンではインターネットで集まりモスクやアジール施設の襲撃を計画したとして「オールドスクールソサエティ」が告発されている。解決率は低く10-15%だ。突き止められた犯行容疑者はこれまで政治的には目立たなかった者が多い。しかし、ZEIT紙の調査によると彼らはソーシャルネットワークのメッセージや意見からは極右集団に分類され、「社会の真ん中」や「市民からなる品行方正な人々」と思われているだけだ。またときには施設職員による難民への権利侵害にも至る。ミュンヘンではErstaufnahme[難民到着施設]で何ヵ月も警備会社の警備員から金銭を脅し取られていた。ザクセンでは局内での難民への傷害のために警察官が捜査されている。

 

4. 難民に関わる従業員への犯行

難民だけでなくそのために働く人もしばしば闘争的な反対派の犠牲になる。難民事業を担当する政治家もそうなりうる。重大な事件では、難民に関わる仕事に従事する福祉局長と市長立候補者のHenriette Rekerがケルンで選挙の前日にナイフで命にかかわる攻撃を受けた。その殺人未遂で訴えられた男は「ドイツ全体に向けて」「誤った難民政策」や「ドイツの組織的な自滅」や「世間離れした左派過激派の上流階級イデオロギー」に反対するメッセージを送りたかったと意見を述べた。自治体政治の責任者も暴力や脅迫未遂の被害者になっている。グレーフェンハインなどの難民支援者も激しい脅迫に遭っており、そのため十分に高く評価されていない難民支援業の中で自治体の無償の支援者ネットワークを通して不安感を負うている。

 

5.亡命制度の悪用での犯罪

最後に亡命制度の悪用での犯罪の種類について述べる。これらは概略を述べるに留める。

難民がここに到着するまでに彼らは、しばしば組織的に行われる不法入国、詐欺やゆすりから過失や意図による殺害まで、さまざまな犯罪を見聞きする。亡命制度はおそらくときおりイスラムのテロリストを難民と偽って入国させるために利用される。さらに難民の中には戦争関連の犠牲者だけでなく、積極的に戦争関連事件に参加した者もいる。さらに国から国へと引っ越してアジール申請をせず滞在の資格をとる機会もなく雑多な犯罪で生計を立てる外国人もいる。

ここに行き着いた難民の中には5~10万人の同行者のない未成年やすぐには統合の試みに参加しない者たちがおり、彼らの中から若い世代がイスラム主義の活動家や狂信者、強制売春や組織的薬物売買の人員が募集される。

 

続く。