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記事紹介: ドイツ警察内の極右

このところ毎週のようにフランクフルトでアンティファのデモがある。

2018年の12月にセダ・バセイユルドゥスという弁護士が極右の警察官から脅迫FAXを受け取るというショッキングな事件があった。その後、警察内の極右関連事件や、極右団体のネットワークの有無を内務省や警察が十分に行っているのかが問題となっていた。

アンティファのデモでもスピーチでそのことに触れられている。そしてフランクフルト警察の事件や極右ネットワーク解明への姿勢も批判の対象になっている。


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Twitterで拾ったコラ画像

上: 3人の髪の黒い男がバス停に立っていたときのフランクフルト警察

下: 警察のコンピュータから殺害脅迫が送られたときのフランクフルト警察

 

近所の事件ということもあり、続報を調べたので紹介する。

以前の記事はこちら↓

 

記事紹介:フランクフルトの極右警官の事件について

 

記事紹介:フランクフルトの極右警官の事件について

 

今回見るニュースは、各州の状況をドイツラジオ放送が取材し概観したもの。割愛したがこの記事でもヘッセン州の話題から始まっている。

 

2019年12月のドイツラジオ放送のTom Schimmeckによる記事。

 

https://www.deutschlandfunk.de/rechtsextremismus-bei-der-polizei-zu-viele-einzelfaelle.724.de.html?dram:article_id=466389

 


警察での極右   あまりに多い個別の事件


警察において極右の考え方や行動が増えているとDlf[ドイツラジオ放送]の調査は述べている。調査された約200件という数字は26万人の公務執行官に比して多くはない。しかし警察の体質は悪化していると専門家は警戒している。

 

北ドイツ放送(NDR)のニュースによると、

「シュヴァーリンの州裁判所で告訴されたSEK(州警察特殊部隊)の隊員は今日さらなる罪状を認めました」

シュヴァーリンの[メクレンブルク・フォアポンメルン州の]州裁判所の大刑事部で11月に長年州刑事警察官で精密狙撃手のMarco G.が告訴された。検察が彼を非難した内容によると、「Marco G.被告が電信チャットグループの『NORD KREUZ』と『NORD Com』を設立したことで、これらのメンバーは、ドイツ連邦が戦争や天災、経済衰退のため深刻な社会的危機に陥りかねないという思想で結束しています。そのような破局の犠牲にならないために彼らは危機的な事態、いわゆるXデーに備えています」

捜査のさいに銃、拳銃、ナイフ、スタングレネード、警棒、5万発以上の弾薬が見つかった。Marco G.の供述によるとチャットグループは60~70の参加者がおり、その中には警察や連邦軍のメンバーもいたという。迫る緊急事態にそなえ敵リストと呼ぶものを作成していた。そこには政治家、ジャーナリスト、芸術家や活動家など、数千人が載っていた。また死体袋や消石灰の調達も計画されていた。Nordkreuz複合体についてはさらなる訴訟手続きが係属中である。Marco G.に対する訴訟はシュヴァーリンで木曜日に判決があり、一年9ヶ月の勾留となった。執行猶予つきの刑である。

 
警察に極右のネットワークはあるのか。


すべては個別の事件なのか。それとも右翼過激派がこの公共機関内の進軍を開始したのか。

2011年から公になった犯罪と、ナチス地下組織や増大する憎悪犯罪の波についての捜査ミスがあり、また今年[2019年]の6月にカッセルの行政区官庁のWalter Lübckeが殺された事件や10月に会館で反ユダヤ主義者が大量殺戮を企図したあとでは、明らかになったことがある。それはドイツ連邦は極右の暴力の問題をかかえているということだ。さらに警戒すべきように思えるのは、極右が広まっているかもしれないところが、よりによって国家の暴力専有が根を下ろす場所取りつまり警察機構の中だということだ。

 

警察労働組合(GdP)の連邦議長のOliver Malchow。

Malchowの警察労働組合はジレンマに陥っている。一方で組合は人員を守り、ドイツの執行官は26万人もいることをかんがえると事件の件数は重要性が低いとし構造的な問題はないと明言する。他方では、機構内での組合は右翼の共謀にさらに対抗することを求めている。連邦や州の警察も右傾化を免れているわけではないからだという。Malchowが言うには、警察には過大な要求や疲労など抑圧があり、怒っている警官が多い。それで正しい共感を育めるだろうか。

「共感するとは言いたくないが、警察官も人間です。そして彼らは政治的な責任者に期待を抱いています。彼らはある面では問題のある状況に置き去りにされているようにも感じています。社会のゴミ箱のように。誰が想像できるでしょう」

 

多くの事件の全体は把握しきれていない

「単なる悪趣味から犯罪行為までここではすべてがある」とハンブルクの警察アカデミーの警察学教授Rafael Behrは認める。実証的な証拠はないが、事件の総体はほとんど把握されていない。

「私の評価では、役人上官や役所の幹部は過去数年間、民主主義に耐えうる職員が警察に来ていると強く過信していたと思います。そしてこの職業それ自体が過激主義の指標にもなりうるということをあまりに考えていなかったのです」

必ずしも極右でなくても警察指導官の言う「厳格化」については、永続的な経験を通じて失敗のもとになる。「任務での粗暴化」だとBehrは言う。彼の上官でハンブルク警察アカデミー学長のThomas Modelも同様に、

「ここで職業訓練を受けて、警察公務へと出ていき、その中でもっとも深刻な状況に身を置き、夜勤をして、犯罪者と対面し、特定の倫理観や立場に向き合い、そこで自分で観念を形成していく若い人たち。彼らは置き去りにされていると感じています。そして導くことが必要です」と述べている。

 

AfDは不満をもった警察官の支持を得ようとしている


AfDはその間に不満をもった警察官に全力でアピールしている。

Wagner(NRW ノートライン・ヴェストファーレン州): 「われわれは保護ベストや唾吐き保護頭巾がほしい。最近警察官として必要なものすべてを望みます。テーザー銃の導入も」

Hermann (MdB ドイツ連邦議員): 「私たちはAfDの会派として私たちの警察、私たちの勇敢な男女を後ろ盾となります」

Loose (NRW): 「警察官は人間でしょうか、それともならず者でしょうか」

Von Storch (MdB): 「左翼党や緑の党の汚い連中は警察と戦い、犯罪を保護して助長し、無防備にして私たちをアフリカの麻薬の売人やアラビアの氏族にあけわたすのです。」

すでに多くの警察官がAfDの国会議員として州の議会や連邦議会議席についている。たとえば警部のMartin Hessは、「AfDは、はっきりと言わせてください、しっかりと私たちの警察の側にいます。緑の党と左翼党は私たちの警察の敵だ」と言っている。

Behr: 「警察官のもつ懸念とAfDの提案にはいくつかテーマの重なりがあります。なので、君たちが政治で支持を得れば君たちはもっと成功するというこの議論は警察官に影響を与えやすい主張です。もし誰かが警察官たちのためにそれをすると約束すれば、そこにいくらか支持が集まることもあるでしょう」

「一方でこれは安全保障機関の職員に向けられたキャンペーンでもあります」とベルリンの法・経済単科大学の警察が専門分野の教授のChristoph Kopkeは言う。「彼らのモットーでは、国はお前たちを見棄てた、上からの反乱だ、メルケル政権は不法だ、抵抗しなければならない、となります。すでに過激派右翼からの正式な声明が安全保障機関、警察、連邦軍に対して出ています」

 

 

Dlf[ドイツラジオ放送]の極右事件についての調査

数ヶ月にわたり、ドイツラジオ放送は、全ての州の16の内務省および連邦警察とBKA[連邦刑事庁]を管轄する連邦内務省でより詳細なことを知るように努めた。回答は詳細さと質がさまざまだった。


詳細なものだけいくつか紹介すると。

 

ノートライン・ヴェストファーレン州: ノートライン・ヴェストファーレン州は現在いわゆる帝国市民[Reichsbürgern 現体制を否定する極右イデオロギーの支持者]の関連で4人の警察官の懲戒手続きを伝えている。「どの警官も懲戒期間中は停職しているか、すでに退職しています」去年、NRWの視察官が、極右の疑いがある警官について7件知られていると明らかにしました。

 

バイエルン州: バイエルン州内務省は2018年について警察で、憲法に敵対するシンボルを使用した1件、民衆扇動を2件を報告した。2019年には、メディアが取材で得た情報では、バイエルン州の捜査官は、さまざまな警察の部隊所属の約三十数名の警官のチャットグループ内で、反ユダヤ主義で極右の映像拡散に関わった。ミュンヘンの区裁判所は7月にひとりの公務員に民衆扇動で科刑命令を発した。

 

ハンブルク州: ハンブルク州は2013年から少なくとも6件を記録していて、ニーダーザクセン州は、過去5年[2014~2019年]に「極右との関係や帝国市民運動への関与の疑いのため7件の懲戒手続き」を記録している。今さらに1件追加で報告が来た。

 

ニーダーザクセン州: ハノーファーから送られた表では以下がリスト化されている。「外国人敵視の意見表明」が2回、「ナチスのシンボル使用」が1回、「ヒットラーの敬礼をした」のが1回、「法治国家の否定」が1回、「帝国市民運動への関与」が3回。

 

ザクセン州: ザクセン州では内務省は2014年以来16件あったことを報告した。2018年の秋に、2人のザクセン州のSEK[地方警察特殊部隊]の隊員が、エルドガンのベルリン訪問の際の配備のためのコードネーム決定のときに、NSUのテロリストのUwe Böhnhardtの名前を選んだことが知られている。

 

ヘッセン州: ヴィースバーデン内務省は、「とくにヘッセン州の警察署に設置された特別組織を通じ、警察官の潜在的な右翼傾向の小さな疑いもすべて懲戒や刑法によって追跡しています」と公表した。ヘッセン州は極右と戦っていることを示すために特別に熟慮しているようである。「NSU2.0」の弁護士Seda Başay-Yıldızへの殺害脅迫、これについては2019年にさらに脅迫FAXが来たが他にも、警官のチャットグループ内で喜ぶヒトラーの肖像、鉤十字、障碍者や難民のヘイト画像が共有され、さらに事件はある。2019年の春に38件の刑事および懲戒手続きが話題になった。

 

ブランデンブルク州: ブランデンブルク州からドイツラジオ放送にはすでに8月に2013年以来で10件の警官に対する手続きを報告しており、これらは主に民衆扇動によるものや「反憲法組織の標章の使用」のためだった。先週ポツダムからさらに11件が届いた。その中にはコットブスに駐屯する警官9人の懲戒手続きが含まれる。

ブランデンブルク警察機動隊の百人部隊は11月の気候保全対策同盟のエンデ・ゲレンデの抗議行動に対する大規模動員に参加した。彼らは、「ストップ エンデ・ゲレンデ」と書かれ、大きな壁画の前で警官の集団が映っている自撮りを投稿した。その壁画にはCottbusの市の紋章のザリガニが添えられていたが、これは極右とアイデンタリアン運動のシンボルとしても使用される。

これのことらしい。


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Cottbus市の紋章はこれ。

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ザリガニは殻とハサミがあるので自衛と抵抗の象徴と見なされるらしい。

 

写真が知れ渡ったあと警察は、「この集団は、中立性の決まりに違反していることが問題になったため動員から離しました」と伝えた。そのあとで言われていたのは、壁を上から塗るように命じられた警官がザリガニのそばに「DC」と残していて、これは極右組織「Defend Cottbus」の略だという。

 

連邦: [中略] もう一年も前に左翼党の質問に対して内務省は2012年から2018年の間に17件を列挙し、内容は「REX」(極右)と「Rass」(レイシズム)でラベル付けしてあった。その中で一番奇妙な事件は「目撃者として法廷に立ったときThor Steinar[ドイツの極右に好まれるファッションブランド]のズボンを履いていた」というもの。

 

ベルリン州: [中略]

2015年にベルリンで、Whatsappで同僚に極右のクリスマスの挨拶を送った警官が大見出しになった。とくに「ホー、ホー、ホロコースト」という表現が問題になった。


一番そっけない回答と思ったのはブレーメン州で、

ブレーメン州: ブレーメン州は、引用すると「レイシズムだとされるいくつかの個別の事件」を州の行政のための単科大学に登録しただけだ。

 

この非常に不完全なリストから合計で200件のドイツの警官の極右的な行為が明らかになった。

「これは、秘密の軍のようなものが組織されることを思わせます」と緑の警官のDobrowolskiは言う。「これはゾッとすることですし、もちろん今おおやけになっている事件だけでこれだけあるわけです」

Behrは「この極右主義についての私の問題は個々の極右主義者ではなく、警察内での風土が変わりつつあるということです。つまり、私の見たところ、後ろ暗いところのない者たちが影に隠れ、不正な者たちが堂々とするようになっています。彼らは臆することなくものを言い、以前なら完全に隠れてしか言えなかったことも言います。これは大学研究の中でも耳にすることです。そういう論評はいっそう大胆に、支配的に、硬直したものになっています」と言う。

今週の火曜日に連邦内務大臣のHorst Seehofer (CSU)は連邦警察と連邦憲法擁護庁に極右主義者の増加を案じる職員600人を追加で採用したことを発表した。さらに彼は、公務員内の極右の共謀解明のため新しい対策本部を設置した。ここでは役所の従業員の過激派運動との潜在的な結びつきを対象に究明をすることになっている。

Seehoferはこの件で批判もされている。また紹介する。

 

調査は許可されるべきである

憲法擁護庁長官のThomas Haldenwangは「これは個別の事件かもしれないし、これまでそう報じられてきました。しかし私の意見では個別の事件にしては多すぎるので、一度全体を調査してネットワークがないかを見なければいけません」

しかしいまだにほとんどの大臣と警察署長は警官の立場の調査を許可することに抵抗している。「責任者が私に異論を唱えて言うことは、当然のことで、いやはやそれが明るみに出ることなのです。そしてそれこそ問題点なのです」とハンブルクの警察アカデミー学長のModelは言う。すべての警察署は雑誌に「警察は過激派だ」と載ることを恐れているからだ。職員協議会と労働組合もまさにそれを心配している。

 

 

ヘッセン州は多くのスキャンダルのあと2019年の2月に、第一に学問的な研究を対過激派の情報および専門知識センターに委任した。一方でニーダーザクセン州は啓発に力を入れる。内務大臣のBoris Pistorius(SPD)は、「私たちは、極右や右派ポピュリストがこの社会を分断し人々互いに争わせ、人間を一級、二級、三級と区別させることを許さない。私たちは二度とそれを許さない」と述べた。

先月、ニーダーザクセン州内務省は「民主主義のための警察保全」キャンペーンを開始した。多くの場で、ドイツラジオ放送の調査結果でもわかったが、警察アカデミーで歴史が重要なテーマになってきている。たとえば警察の反民主主義傾向はワイマール共和国の時代にあった。