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BTSへの差別発言炎上: Kpopと反レイシズム


twitterでしばらく #Bayern3Racist や#RassismusBeiBayern3 がトレンドに上がっていて、何のことかチェックしてなかったんだけど、Nhi Le @nhile_de さんのツイート見て知った。

 

発端はこれ。

Matthias Matuschik: Bayern-3-Moderator beleidigt K-Pop-Band BTS

 

2021年2月24日にドイツのラジオBayern-3の司会者Matthias Matuschikが生放送で韓国のバンドの防弾少年団に差別発言をして炎上したらしい。ラジオ放送局は声明を出して司会者を擁護した。

 

彼はBTSをコロナウィルスに喩えて「糞ウィルスみたいだ。これにももうすぐワクチンができたらいいな」と発言。

 

このバンドが好評なのが理解できないことは以前から口にしていたが話しているうちに怒りがこみ上げてきたようだ。

 

「しかもこの小さいションベンたれどもはColdplayの"Fix You"をカバーしたとまでのたまうじゃないか。「冒涜だ!」って言うとこだよ。ぼくは無神論者だけど。不敬行為だよ。このことで君らは今後20年北朝鮮で休業だよ」

 

 

ラジオ局による擁護の要点は、

「カバー曲への個人的な意見」

 

「忌憚ない意見が彼の持ち味」

 

「皮肉で尖った意見を大げさな憤慨で表現しようとしたが、言葉選びで度が過ぎてファンの気持ちを傷つけた」

 

「Matuschikは、難民支援に参加し極右に反対している。レイシストではない」

というもの。他にもMatuschikが「韓国嫌いではない。韓国の車をもってるし」と弁明している。

 

元の発言の問題点は、出自をウィルスと結びつけたことに始まる差別発言であって、辛口の音楽批評でBTSやファンの気持ちを傷つけたことではない。ファン自身が「BTSを低く評価されて傷ついた」と言っていてもそれはレイシズムとはまた別の話だ。

とはいえ音楽批評に関しても、人種的偏見を露呈したことでこのDJが評判を落とすなら、それはもっともなことだと思う。

ラジオ局が個人的な意見であることを繰り返したため、#RacismIsNotAnOpinion がいっしょにトレンド入りしていた。

 

アジア人に対するコロナ差別は未だにあるらしい。


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それに加えて「北朝鮮で休業」もマズい。以前ぼくは、ある韓国人がドイツで自己紹介したとき、ドイツ人が「北朝鮮から来たの?」と冗談のつもりで聞いたのを見たことがある。こういうこと、わりと頻繁にあるんじゃないかと思う。朝鮮民主主義人民共和国の体制を批判することと、朝鮮半島出身の人にこういうからかいをするのとは何も関係がない。

何より冷戦による国の分断を乗り越えたドイツの国民が「北朝鮮送り」を面白い冗談だと思って口にするのは、ほんとにガッカリさせられる。

もう一つの興味深い点は、彼が自分は無神論者(Atheist)だとしつつもアジア人が西欧の歌手のカバーをしたことについて比喩的に「神への冒涜(Gotteslästerung)」や「忌まわしい行為、高慢、冒涜(Frevel)」とキリスト教の擁護者のような表現をしているところだ。これは極右の活動家がよく、移民反対の文脈で「キリスト教徒のヨーロッパ(das christliche Abendland)」への支持表明を行なうことを思い出させる。普段どれくらい信心深いかはわからないが、外国人へ敵意を向けるときにはキリスト教が持ち出されるのだ。

 

BTSの人気もあいまって、この件でアジア人に対する差別に反対する動きが盛んになっている。アメリカでの寺放火事件などのヘイトクライムも話題になっていたらしい。

#StopAsianHate アジア系へのヘイトクライムが多発しNetflixやナイキなど企業も強く抗議 | HuffPost Life

#StopAsianHate や #ichbinkeinVirus (私はウィルスではない)や関連する他のハッシュタグがトレンドに上がっていた。英語と韓国語が多いが、日本語での発言もけっこうあった。

 

 

ドイツにもBTSのファンが多いらしく、発言直後からラジオ局を批判する勢いがtwitter上で高まっていた。ぼくはまずドイツ人が声を上げるべきところだと思っているが、「いいドイツ人もいます」というエクスキューズになるのを避けるため批判の例をここでいちいち紹介はしない。

かわりにtwitter上のどうでもいい派生事案を上げておく。

Shahak Shapira はユダヤ系ドイツ人の社会派アーティストでコメディアンだが、彼はドイツ語圏のBTSファンがあまりに熱心にBayern3を叩いているのを見て以下のツイートをした。

 

 

Wenn wir die AfD dazu bringen, sich mit der Twitter K-Pop-Community anzulegen, sammelt Beatrix von Storch ab morgen Pfandflaschen.

 

「もしAfD[ドイツ人のための選択]をTwitterK-popコミュニティと争わせたらBeatrix von Storch[AfDの政治家]は明日からデポジット瓶を集めることになる」

(デポジット瓶を集めるのは主に失業者の仕事)

ちょっとわかりにくい皮肉だけど、要するにドイツ人が普段からこれだけ熱心にレイシズムを許さない態度を見せていたら極右政党は議席をとったりしないだろ、という意味だ。

ぼくは、シニカルすぎるけどまあ確かになぁと思って見ていたんだけど、なんとこれが大炎上。ドイツのBTSファンに大量の批判リプライを受けることになる。

Shahak Shapira はまた皮肉で応戦して以下のツイートをぶら下げた。

 

Dear BTS Fans, if you are offended by my tweets and would like to contact me personally, please reach out to my management:

Alternative für Deutschland, Landesverband Berlin Kurfürstenstraße 79

10787 Berlin

Telefon: +49 (0) 30-2205696-22

EMail: lgs@afd.berlin

 

「親愛なる防弾少年団ファンの皆さん、私のツイートに腹を立てて個人的に私に連絡したいなら、私の事務局に連絡してください」

と、書いているが連絡先はAfDのもので、もちろんShapiraは党員ではない。ラジオ局の炎上を何とかAfDにけしかけようとした小芝居の延長だ。さらに「私の上司のAlice Weidel(AfD党首)に連絡ください」と続けると、ほんとうにAlice Weidelに「私の方がアーティストの才能あります。彼と入れ替えに雇ってください」とリプライを飛ばす人まで出る始末。

ドイツでAlice Weidelを知らないというのは、日本で小池百合子を知らない、くらいの感じ。最終的にShapiraはTwitterアカウントにハッキング未遂を受けたあとVISAカードの番号を晒されるところまで行った。

ポップカルチャーもいいけど、これきっかけに社会や政治の問題にも興味もってほしい。日本のKpopファンは、アジア人差別についてもうちょっと真面目に考えてるはずだと期待してる。