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記事紹介:ドイツ食肉産業での東欧労働者

東欧出身の労働者が建設現場で搾取されているという記事を紹介した。

 

以下の2018年ドイツ労働総同盟(DGB)大会についての赤旗の報告によると東欧出身の労働者の搾取が多い業界は、食肉、輸送、物流、介護、造船などらしい。労働組合加盟者が減っていることも書かれている。

 

▽東欧出身の労働者を使った賃金ダンピングが、食肉、輸送、物流、介護、造船など各産業に広がっている

人間らしい労働へ連帯/雇用安定・反差別など訴え/ドイツ労働総同盟 大会始まる

 

介護業界での移民労働者については以前このブログで紹介した記事がある。

論文紹介: ドイツの移民ケア労働者 前編 - Ottimomusitaのブログ /

論文紹介: ドイツの移民ケア労働者 後編 - Ottimomusitaのブログ / 

 

今回は食肉産業での労働問題の話題を紹介したい。

 

昨年2020年5月21日の南ドイツ新聞の記事。昨年、ルーマニア厚生労働大臣Violeta Alexandruが車でベルリンまで来て、ドイツの労働大臣のHubertus Heilと会って、そのあと食肉処理場や農場の労働環境を視察したそうだ。それを期にこの記事が書かれた。

 

Rumänen in BRD: "Das sind Menschen, die hart arbeiten" - Politik - SZ.de

Arbeitsmigration nach Deutschland Grausige Unterkünfte, kaum Lohn und dann auch noch Corona

ドイツへ来る労働移民

ひどい宿舎、わずかな賃金さらにはコロナ

 

食肉産業をめぐる議論や、ノルトライン・ヴェストファーレン州のアスパラ農場への抗議、ルーマニアの労働大臣の訪問が示す通り、連邦政府は東欧からの労働者に依存しているのもかかわらず彼らはひどい扱いを受けている。

 

Thomas Hummel

 

(中略)

月曜にはすでに彼[Heil]はいわゆるコロナ内閣に彼の計画を提出していた。これはCDU内でいくらか懸念があったが水曜には進める方向で受理された。計画の主眼は、来年[2021年]から食肉産業でいわゆる請負契約が禁止されることだ。この一種の転移によって企業は責任を下請け業者に押しつけている。Heil は彼らを災いの「根源」と読んだ。コロナ禍でそれはいっそう明らかになった。

東欧や中東欧からの移民労働者をめぐる歪みはコロナ前からすでに議題になっていた。社会同盟や労働組合は何年も前から劣悪な宿舎、低い賃金、労働者の権利の無視を弾劾していた。そこにきてコロナ禍がこの国の経済の一部は東からの援助者なしには回らないことを明らかにした。生鮮食品産業、介護、建設、清掃業、造船業、そして自動車下請け業者の一部は東欧出身の低賃金で意欲的な労働者に割り当てられている。コロナのために国境が封鎖されて春が来たとき農場では収穫支援者を入国させる許可を文字通り乞い求めてまわった。「ドイツは部分的に移民労働者に依存している」とドイツ労働組合連盟のプロジェクトFaire MobilitätのリーダーのDominique Johnは言う。

最近では移民労働者の最大多数はルーマニア出身だ。2019年の前半だけで10万人以上のルーマニア人がドイツに来た。二番目はポーランドからで5万人以上だ。それに3万4千人でブルガリア人が続く。2014年の初めからルーマニアブルガリアの東バルカン両国はEU内の完全な自由交通が認められている。当時はとりわけ保守の政治家がドイツの福祉制度に人が殺到することを警戒していて、福祉ツアーが話題になっていた。

その推定は誤っていた。この2ヵ国からのハルツⅣ[失業保険]の受給者の割合は他のEU諸国の割合より高いわけではない。DGB[ドイツ労働組合総連盟]の職員のJohnは、ルーマニアからの移民のイメージが変わることを望んでいる。「人々は現実には仕事が必要なので来ているし、働きたい。それは在宅では十分な収入を得ることが難しいからです」と彼は言う。ルーマニアからの移民にはすべての社会階層の人がいる。多くの医者や看護師や、他の専門技能を身に着けた人々が自分の国を去っている。しかしはるかに多くの人が貧しい田舎の地方出身で簡単な仕事を探している。

 

ルーマニアには見通しがない数百万人

ルーマニアでは経済的な見通しが悪い。ルーマニアフリードリヒ・エーベルト財団の代表Juliane Schulteは「ルーマニアでは数百万人がその日暮らしをしています」と言う。ヨーロッパ統計機関Eurostatの出した数字によるとルーマニアの平均手取り所得は昨年は月に368ユーロだった。EU全28ヵ国の平均は月1666ユーロである。そのため多くの人がEUの他の国に行く。とくにイタリア、スペイン、ドイツ、ときにはイギリスまで。「外国への移住はルーマニアでは評判がいいです。一生懸命働き、生計を立てている人々です。それがルーマニアでできないのなら別のところにも行きます」とJuliane Schulte。

どれだけのルーマニア人が長期間または定期的に外国で働いているのかははっきりしていない。少なくとも300万人と言われ、500万人とも言われる。人口は1940万人なのでこれは国民人口の四分の一に相当する。「これはルーマニア社会の周辺現象ではありません。あまりにも多すぎます」とSchulteは言う。そして多くのルーマニア人が家で汚職縁故主義に不満を言いいながら、契約が遵守され法律が守られる正しきドイツを信じている。それだけに彼らはここドイツで彼らの身に不正が起こると、DGBのDominique Johnの報告のように、驚いた反応をする。その一例をVioleta Alexandruは今週初めに視察した。

彼女は自分の車でベルリンからドイツを横断し、ボンのBornheimにあるイチゴとアスパラの農場であるRitterに行った。農場は年の初め以来破産しており、管理人が経営を担当している。にもかかわらず収穫支援員はまだルーマニアから採用されている。Der Bonner General-Anzeigerは、約240人の収穫支援員がときに4、5人がひと部屋で浄水施設の隣の宿舎に収容されていると報じている。数日前から彼らは未払い賃金や低すぎる賃金、壊滅的な衛生状況や劣悪な食事に反対してデモをしている。150人の農場労働者がストライキに入った。そのえ秩序局が初めて宿舎を清掃させた。

東欧の季節労働者が勇気をもって労働や生活の状況に反抗することは稀である。今回のケースでは報われたようだ。Violeta Alexandruは現場でドイツ農家連盟の代表と、破産管理人とも、すべての未払い賃金が支払われることで合意した。さらに希望するすべての労働者は帰郷の旅費支援を受けることになった。また働きたい者は他の農場に移れる。しかしこの農場は経営上終了している。破産管理人は水曜日に収穫停止を決定した。

他の農場も訪れたAlexandru大臣は、そこで働く同郷人たちに困ったときは当局に問い合わせるように励ましたと述べた。しかし彼女は労働者の陥るジレンマを解消できなかった。それは解雇されるとルーマニア人はすぐにホームレスになる危険があることだ。食事と宿も雇用主から受けているからだ。コロナ禍において短期間の帰郷はいつもより困難だ。

(後略)

 

上の記事では東欧出身労働者の搾取がひどい業界は、生鮮食品産業、介護、建設、清掃業、造船業、そして自動車下請け業者の一部とある。いずれにしても社会に不可欠な仕事だ。他の西欧の国よりドイツで精肉が比較的安いのもこれらの労働者の現状の上に成り立っているのかもしれない。また、悪い労働環境は動物福祉への配慮にも影響するだろう。

 

以前の動物福祉や精肉ダンピングについてのブログ

記事紹介: Haltungsform ドイツの動物福祉の認証 - Ottimomusitaのブログ

 

 

とくに多くのルーマニアブルガリア出身の労働者が苦境に立たされていることについて。

EUではEU市民は移動も就労も自由なのだが、ドイツなどでは、国内の労働市場を守るために東欧の国にたいして一部規制をかけていた。しかし2014年からルーマニアブルガリアにたいしてその規制は撤廃され、2015年からはクロアチアの人も制限なしで行き来して働けるようになった。

2013年のこの介護業界についての論文では、

ブルガリア人とルーマニア人就労者の住み込みケア労働者としての就業の需要は減少するだろう。なぜなら自由な参入の承諾を得て、よりよい給料と整備された労働条件の見通しがあり、もはや魅力のない仕事に頼らなくてもいいからだ(Schmid 2010, 190)。

という2010年時点での予測が引用されていた。介護業界以外でもルーマニア人は2014年からはビザ無しで働ける。だからほんらいはドイツ人と同じ立場で働けるようになるはずだったのだが、建設業や食肉産業についてはこの予測は外れているようである。平等が実現しなかったのは、東欧の本国とドイツでの賃金格差、下請け雇用業者の手口などが要因だろうか。

 

以下の2017年11月27日のMDR(Der Mitteldeutsche Rundfunk 中部ドイツラジオ放送)の記事はとくに食肉産業での話。やはりルーマニアからの労働者について書かれている。ここでも繰り返されていることは、雇用は直接ではなく下請け業者を介していること、人員募集のための国際的な仕組みがあること、ひと部屋に数人詰め込んで家賃を天引きされること、労働組合などに相談する移民は少ないこと、などだ。

 

 

Osteuropäische Arbeitskräfte in der Fleischwirtschaft: Viel Arbeit, wenig Lohn

Stand: 27. November 2017, 13:56 Uhr

食肉産業での東欧労働者 多い仕事、少ない賃金

朝食でのハムのスライスやフライドポテト屋台でのカレー粉ソーセージなど、肉への渇望は大きい。ドイツ食肉連盟によるとドイツ人は一人あたり60㎏の肉を消費している[1ヶ月当たり?]。これはまず製造されなければいけない。10万人以上がドイツで加工する食肉産業にたずさわっており、その3分の1が東欧出身だ。

食肉処理場での労働は過酷だ。家畜に麻酔をかけて屠殺し、肉を細かく切り、腸を洗い流す。そしてこの骨の折れる仕事はたくさんある。WeißenfelserのTönnies社の食肉処理場だけで二交替勤務制で処理する豚は2万頭に達する。働いている全従業員1700人のうち約60~70%は東欧からの派遣労働者だと、食品外食業労働組合NGGは見積もっている。

 

最低賃金を守っているのはしばしば書類上でのみ

彼らは下請け業者を通じて求人されることが多く、下請け業者は東欧労働者と社会保険加入義務のある請負契約をして、最低賃金の時給8.75ユーロを約束する。しかしこの最低賃金は言葉の上でしかないことが多い。じっさいには明らかにそれを下回ると組合員のSzabolcs Sepsiは言う。それは超過勤務は記録されておらず残業代もなく、着替えと移動の時間は差し引かれているためだ。Sepsiは、ドルトムントの相談所「Faire Mobilität」で東欧出身の労働者の相談にのっている。彼に助言を求める人の中には、あちこちにドイツ最大の食肉処理場の拠点をもつTönnies者の従業員がよくいる。

 

「あらゆる面で騙された」

東欧の被雇用者は食肉産業での厳しい労働条件への批判を表立ってはほとんどしない。WeißenfelserにあるTönniesの工場のルーマニア人のある女性労働者は、下請け業者に「宿舎から食事から何から何まで書類全部が嘘で、騙された」と言っている。さらに長時間労働もある。彼らの労働日は10~12時間になることが多く、さらに土曜日にもう9~10時間追加で働く。

 

"家に帰って何か食べて風呂に入って寝る。朝は4時に始まることが多いので4、5時間寝てまた仕事に行く"

   ――匿名希望のWeißenfelsのTönnies工場の女性労働

 

Tönnies社は12時間働く日はないと言う

Weißenfelsの工場内の映像撮影を申請したがTönnies社は拒否した。労働者たちが言うような12時間にもなる勤務シフトはないとこの財閥は言う。書面での意見表明では、

 

"いいえ、個々人の労働時間が12時間にはなりません。労働時間についてよく誤解があります。いわゆる正味労働時間は、休憩規則や通勤時間を含めた仕事の準備時間を含めた会社での時間です"

      ――Tönnies財閥の意見表明

 

家賃は直に給料から引かれる

Constantin Aurelianもドイツでの仕事をずっと夢見てきた。南ルーマニアのCalarasi出身の非熟練である彼はFacebook上でノルトライン・ヴェストファーレン州の食肉処理場の下請け業者の求人に応募した。

彼の給料から家賃のための金がすぐに引かれると彼は言う。一つのアパートが250ユーロで、そこを他の7人の労働者と共有しなければいけなかった。たいていの東欧の人は一時的に滞在したいだけなのでそのような状況に耐えている。一方でAurelianはそのような搾取された条件に耐えられず辞職した。ドルトムントの相談所の「Faire Mobilität」で、下請け業者がまだ払っていない手取り800ユーロをどうしたらもらえるか相談にのってもらった。

 

たいていの人は不安のため声を上げない

相談所の労働組合員Szabolcs Sepsiは東欧の労働者のほんの一部しか自分の権利を主張していないことを知っている。たいていの人は訴訟などの手続きが何ヶ月も続くし職を失う不安があるので訴えたがらない。WeißenfelsにあるTönnies社の食肉処理場では彼らは月に額面で1500ユーロ稼げる。ルーマニア最低賃金に従って支払われた場合、彼らはそれの約5分の1しか得られないだろう。