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記事紹介: セルフID法とドイツ信号連立政権

ドイツのトランスセクシュアル法(TSG)、または性転換法は当事者を尊重しておらず問題があるとして、自己決定法に変更する法案が出されていた。この新法は、他の国でいうセルフID法に相当するもので、実現すればトランスの人の性自認が法的身分の性別変更によりよく反映されることになる。

しかし自己決定法は以前、緑の党自由民主党(FDP)が法案を出したものの、他党の反対多数で否決され実現に至っていない。

 

記事紹介: 自己決定法、否決。ドイツの反トランスジェンダー - Ottimomusitaのブログ

記事紹介:ドイツで自己決定法(セルフID)が否決。現行法の問題点 - Ottimomusitaのブログ


ところでドイツはこの間の選挙のあと、社会民主党(SPD)、緑の党、FDPの3党による「信号」連立政権が誕生した。

緑の党とFDPはもともと自己決定法を推進しているし、SPDはあいまいだが全面的に反対していたわけではない。なのでこの新政権下で自己決定法の成立が期待されているわけである。


気になるのはSPDの動きである。SPD党首のオラフ・ショルツはインターセクショナルなフェミニストを自認しているそうだ。つまり「普通」とされる女性の権利だけに限定せず、人種やセクシュアリティ、階級も考えながらフェミニズムを実践します、という宣言だ。言語学者でラッパーのレディ・ビッチ・レイに助言を受けたらしい。彼女はわりと信頼できるインターセクショナルなフェミニストだ。以下の記事は保守系のFOCUSで内容は冷笑的。好きに別の性別になれるなら俺は非白人になるぞ云々。


Die FOCUS-Kolumne von Jan Fleischhauer Feminismus war gestern: Porno-Rapperin bringt SPD-Spitze neues Gender-Denken bei Samstag, 27.03.2021 | 17:49


連邦議会に初めて議席を得たトランス女性連邦議会議員の一人Nyke Slawikにインタビューした記事があった。

 

Nyke Slawik: „Debatten gegen das Selbstbestimmungsgesetz sind antifeministisch”

22. Nov. 2021 Nina Süßmilch

トランスの連邦議員へのインタビュー

Nyke Slawik「自己決定法に反対する議論は反フェミニズム

 

27歳のNyke Slawikは、緑の党のノルトラインヴェストファーレン州の名簿順で連邦議会入りした。


緑の党の政治家Nyke SlawikとTessa Gansererは、トランスだと公表している女性としてはドイツで初めて連邦議会入りした。私たちはSlawikに、新任議員としてどんな待遇を経験したかや、どんな政策に力を入れたいかを尋ねた。

 

Slawikさん、「トランスセクシュアル法」(TSG)は廃止されなければいけませんね。あなたは、これは容易になると思いますか。そしてこの改革は信号の協議項目で上位に来ると思いますか。私は、チャンスが今までにないほど高まっていると思います。とくにクィア政策と自己決定権の分野でいつもブレーキをかけていた党や会派はもう加わっていませんので。TSGは今のままでは多くの点で違憲です。すでにヨーロッパの10の国が性の自己決定に向けて進歩しており、それは私たちが政治として行わなければいけない承認です。性差は私たちが伝統的に出生証明書に登記しているよりも複雑で多様だという事実をいいかげん顧みなければなりません。

 

インタビュアー: あなたは新しい連邦議会議員として同性愛やトランス敵視反対や広くより公平なあり方にどう尽力したいですか。


Slawik: まず私は可視化することが重要だと思います。今二人のトランスだと公表している人が初めて連邦議会入りしたことは、コミュニティや一般社会において大きな兆候だと思います。そしてさらにかつてないほど多くのクィアの人が、連邦議会に22人いることもです。この割合はまだ改善する意義がありますが、素晴らしい兆候です。16年のCDU首相時代のもとで多くの課題が残されてきました。たとえば家族の権利です。家族はこんにち異性愛者夫婦の他にも多様な形があります。私たちはレインボー家族やパッチワーク家族の承認に向けて転換しなければいけません。トランス男性が妊娠すれば出生証明書に父親として認められることが可能でなければなりません。同時に私たちはクィア敵視が街頭やインターネットで問題になっている社会で生きています。それに反対する啓発活動にもっと取り組まなければいけません。私たちは憎悪と暴力に反対する明確な手続きが必要です。また役所や警察内の意識も求められています。クィア敵視に反対する行動計画のようなものが重要です。


イ: 仕事仲間からのトランス敵視を経験したことはありますか。連邦議会での彼らとの付き合いはどうですか。


Slawik: 政治活動家としては、それこそネット上で何度も誹謗中傷の標的になるというのはすでに馴染みのものです。私はもちろんとても傷つきもしました。AfDが前回の任期中に自己決定権の議題を扱ってそれについて物笑いにされた様子などは。しかし私は緑の党や他の会派から肯定的な返信も受け、多くの支援を得ました。議会が多様になったことを喜ぶ人が多いです。社会の変革は、たとえ時間がかかっても民主主義の中心、つまりは議会に届くのだとわかります。


イ: あなたは先ほどすでに多くの国で自己決定権が導入されたことに触れましたが、それは性別の登記が医療診断書を提出しなくても役所で簡単にできるということですね。イギリスではKathleen Stockについて大きな議論がありました。彼女はレズビアンで哲学の教授でフェミニストであり、自己決定権に反対を表明しました。彼女はドイツのメディアでは長い間被害者として描かれていましたが、じょじょにイメージが細分化されてきています。あなたはこの議論で自身をどう位置づけますか。


Slawik: ある面で、私はトランスやトランスの人が経験する差別という議題が大きな注目を受けるようになったことはもちろん嬉しいです。その反面、トランス敵視の議論も注目を浴びています。露骨な偏見やフェイクニュースを持ち出す人々を私はいつもできる限り専門的に対応するように努めています。私たちはもっと啓発し、不安を取り除き、「男性」/「女性」というスタンプが人間本性の全体に当てはまるものではないことを理解しなければいけません。トランスの人やインターセックスやノンバイナリーの人々が存在するためです。私たちはマイノリティですが承認される権利があります。私の意見では、自己決定権に反対するトランス敵視の議論もも極めて反フェミニズム的です。というのもフェミニズムの目的は本来、社会や国家の管理を抜け出して、できる限り自分で決めた人生を可能にし、自分の体について自分で決めた扱いを可能にすることだからです。中絶の権利でも、性別の自己決定権でも同じです。 これらは、私たちが反対しているのと同じ家父長制の構造です。

 

 

 

SPD、緑の党、FDPの3党が合意した政策を記した連立協定が2021年11月24日に発表された。

Koalitionsvertrag 2021 – 2025

その中のQueeres Leben の項目でセクシャルマイノリティについて書かれている。

クィアの生活


クィア敵視に対抗するために、セクシュアリティや性差の多様性の受容と保護のための管轄の垣根を超えた国民行動計画を作成し、財源を充てて実施する。その中で私たちはとくに各州で学校や若者の労働での啓発を支援し、特に中小企業や公共部門で、LGBTIの高齢者向けの雇用口を助成し、労働現場でのダイバーシティマネジメントを推進する。私たちはマグヌス・ヒルシュフェルト連邦基金を恒久的に連邦予算で確保した。レインボー家族を家族政策の中にしっかりと位置づけた。性に特有のものや同性愛敵視の動機を、刑法§ 46 Abs. 2の刑量評価基準の目録に明示的に含める。

刑法§ 46 Abs. 2は刑量評価における犯罪動機についての記述で、今は人種差別、外国人敵視や反ユダヤ主義が挙げられている。

 

連邦と州の警察は性に基づくものや、クィアの人に対するヘイトクライムを個別に把握するべきである。私たちはトランスセクシュアル法を廃止し、自己決定法に置き換える。自己決定法には、性別登記の変更が基本的に本人による情報提示で可能になる法的身分課での手続き、範囲が拡大され罰則がついた[変更前の名前の]開示の禁止、そして啓発や相談サービスの強化が含まれる。性別適合治療の費用は完全に法定健康保険で賄われる。私たちはこの法律において性の発達多様性のある子どもを守るために法の抜け道をなくします。以前の立法のために体を傷つけられたり強制離婚されたりしたトランスやインターセックスの人のため、損害賠償基金を設立する。私たちは転換療法から保護する法律の§ 5 Abs. 2にある罰則の例外規定を廃止し、成人への転換療法の全面禁止も検討する。男性と性交した男性、およびトランスの人の献血禁止は、必要なら法律に基づいて、廃止する。

転換療法から保護する法律は、同性愛やトランスを、異性愛やシスに変えようする処置を禁じる法律。§ 5 Abs. 2の例外規定は、後見人や保護者は例外とするもの。

私たちは、レインボー家族やEUで締結された全加盟国での同性の結婚・伴侶があらゆる法的効力で承認されることを支持する。レイシズムに基づく差別反対に適用されるEUの法的文書は今後は同性愛嫌悪やその他の差別も包括しなければいけない。私たちは迫害されたクィアの人の庇護手続きを再検討し(たとえば帰還時に迫害される可能性を解説する者や判定する者)、宿泊所をより安全にし、特別な法律相談を設ける。

 

自己決定法は期待通り実現に向かっているようだ。これは行政のトップの方針であり、法律が成立して予算が組まれ、役所動き、当事者がいる学校や職場にまで良い変化が及ぶかはまだ分からない。しかし前進はしている。

 

ひとつ気にかかったのは毎度のことながら、いわゆるインターセックスの人々の位置づけだ。Nyke Slawikさんの発言についてもそうだ。

いわゆるインターセックスの人々も法的な登録性別を変更することには関わるかもしれない。しかし、体の性の発達多様性(DSDs)は、性別の移行や曖昧さとは別の問題で、男女二元論を否定する文脈でDSDsを引き合いに出すのは適切ではない。

たとえば不妊症の女性や、ペニスが他の人より小さい男性に、「男でも女でもない」とか「性自認を尊重する」とかいうのは的外れだし失礼にもなる。