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記事紹介: ドイツの長時間労働 稀な違反チェック 食品飲食業界

 

「長時間労働がない」ドイツと日本の致命的な差 | ヨーロッパ | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース

 

「ドイツに長時間労働がない」というのはタテマエであって、実際にはある。よく言われるのは役員クラスや管理職のホワイトカラーは長時間働きがちだという話だが、それだけではない。ブルーカラーの特定の業種や小規模の会社でも超過労働時間が横行している。

 

法律上は一日平均が8時間以内になるようにしければならず、長い日でも一日10時間を超えてはいけないとされている(飲食店は少し例外もある)。しかしこれに違反しているかどうかを役所はほとんどチェックしていない。とくに小さな会社ではまったくチェックされていないと言っていいほどだ。

 

もちろん法定労働時間を超えて働かされている労働者が役所に違反を通告することはできる。しかし、労働組合の加入率が低い会社で自分の雇用者の違反を届け出れば解雇される懸念がある。

じっさい、大きな労働組合を通じて雇用者と安定した交渉をすることを好むドイツでは、個々の従業員による内部告発は他の欧米諸国と比べて稀である。そして他の国と同じく労働組合の加入率は減少傾向にあり、若い人や移民労働者でとくに少なくなる。

 

労働時間法を守っていない会社はそもそも従業員の労働時間を記録していないことが多い。法律上、8時間を超えた分は残業代ではなく他の日の労働時間を減らすことでまかなうことになっている。なので労働時間法を守っていない会社では残業代も払っていないことが多い。

 

一応ドイツの法律上、超過分の労働時間は記録しないといけないことになっている。また日々の労働時間もすべて記録すべしという判決がEU裁判所で下されている。

 

第9回 欧州司法裁判所が画期的判決。企業には全労働時間を客観的に把握・記録する義務あり! – NPO法人 働き方ASU-NET

 

これについてもルールがあって遵守してるかを役所が監査しなければ意味がない。

 

ドイツの労働組合の特徴と現状、超過労働時間の実態などについてはまたこのブログで紹介したいと思う。今回は、役所が労働時間管理をしないことに対する労働組合NGGによる批判を紹介する。NGGは食品や外食産業の産業別労働組合である。

NGG: Alle 230 Jahre eine Prüfung: Gewerkschaft NGG kritisiert „Kontroll-Desaster“ beim Arbeitszeitgesetz

 

Zunahme extremer Arbeitszeiten – Behörden kontrollieren immer seltener

労働時間の極端な増加 ーー役所の監査はますます稀になる

 

Alle 230 Jahre eine Prüfung: Gewerkschaft NGG kritisiert „Kontroll-Desaster“ beim Arbeitszeitgesetz

 

230年に1回の検査: 労働組合NGGは労働時間法における「チェック体制の崩壊」を批判している

 

Berlin, 19. September 2018

食品・飲食・外食業界の労働組合(NGG)は労働時間警報を発した。ここ数年でシフト制、夜間、週末の労働が増えているが、役所による労働時間法の監査はますます少なくなっている。連邦州の労働保護局は去年はわずか15200回の労働時間監査しか行わなかった。これは去年より21%少なく、2010年より41%少ない。

 

これは、NGGだけに提出された連邦議員Susanne Ferschl(左翼党)の質問に対する連邦政府の回答をもとにしている。それによると監査官はすべての検査の3分の2で労働時間法の違反を発見していた。NGG議長のMichaela Rosenbergerは「ショッキングな検査結果」であり「チェック体制の崩壊」だと言っている。「会社が230年に1回しか監査はないと高を括れるなら、被雇用者にとってドイツで最も重要な労働時間法も張り子の虎になりかねない。」

 

州の規制当局はすぐさま大規模に職員を増員しなければいけないと労働組合NGGは要求している。連邦労働大臣によると、州の役所は2016年に2965人しか規制官を雇っていない。「大連立政権は、労働時間法の実験的な改正について考えるよりも、効果的なチェック体制に取り組むべきだ」とRosenbergerは言う。とりわけドイツホテルレストラン連盟(Dehoga)のような雇用者団体が要求するこの法律の規制緩和はどんな状況下でも許されない。

 

いまやドイツ内にどれくらいの規模の極端な労働時間があるかは最新データが示している。2018年の上半期だけでも被雇用者は10億時間の残業をしており、その半分以上は残業代を支払われていない(引用元: IAB)。連邦統計局は、9人に1人は週に48時間以上働いているとしている。就業者の4分の1は日常的に週末に働いており、この割合は飲食業界では86%にもなる。ペステル研究所(ハノーファー)の調査では、夕方や夜間や交代制勤務もここ数年で明らかに増えている。女性はとくにこの影響を受けている。

 

「生鮮食品業界で勤務時間後や夜間シフト後のメールや電話についてもそうだが、無制限な労働時間に取り組まなければいけないことがますます多くなっている」とRosenbergerは言う。国が被雇用者の保護により強行的に取り組まなければデジタル化の時代に状況はより厳しくなりかねない。

(後略)

 

「230年に1回」てなんや、18世紀に労働時間法ないやろ、と思ったがこれは事業所数で割ると一社当たりがその頻度になるということだろう。この記事に書かれていないがおそらく監査されるか否かはまったくの運ではなくて、会社によってばらつきがあると思う。役所がチェックに入りやすいのは事業所委員会があったり労働組合加入率が高い中〜大企業だろう。

上の記事にも書かれているように食品、外食産業は超過労働が多い。他に派遣会社、在宅ケアも労働時間が長くなりがちである。これらの業種移民労働者が多い。いずれにしても労働組合加入率が低く、上記の業種で働くことの多い移民は長時間労働に晒されやすい可能性がある。

 

2021年11月24日に発表されたSPD、緑の党、FDPの連立協定では労働時間について平均8時間を引き続き遵守するとしながらも、監査の増員などには触れず、柔軟な労働時間や「信頼に基づく労働時間」に理解を示し、規制緩和の実験場について謳っている。

Koalitionsvertrag 2021 – 2025

 

フレキシブルとか「新しい働き方」とかはどうでもよいので、最低限、産業革命の頃から要求されている一日8時間労働を実現してからにしてほしい。最低賃金を時給12ユーロに引き上げるとしているが、これが実現しても労働時間を管理していない会社でフルタイム勤務している労働者にとっては絵に描いた餅にしかならないだろう。