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記事紹介:[東ドイツ]極右の研究、承認をもとめる長い闘い

ドイツの東部で多発する右派の暴力や極右・排外主義について、旧東ドイツに原因を見る意見にはどんなものがあるのだろうと思ってまた記事をさがした。

Twitterで去年の5月にkawachi_berlinさんという方が紹介してくれていたのでぼくもそれを読んだ。なので記事も去年のものだ。

f:id:Ottimomusita:20181012231940j:imagef:id:Ottimomusita:20181012231935j:image

このリンク先には、

"「他国友好はOK、ただし移民の滞在は規制範囲内で」というDDR時代の自民族中心主義がいまも影響している"

という記述はなかったのだが、記事の中に動画も貼ってあるのでたぶんそこで話されているのだろう。

書かれていることをざっとまとめる。

Studie zum Rechtsextremismus: Warum häuft sich rechte Gewalt im Osten? | tagesschau.de

https://www.tagesschau.de/inland/studie-rechtsextremismus-ostdeutschland-101.html

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話題になっていた研究は、連邦政府の東部の代議員らが研究機関に委託したもので、東ドイツの右派暴力事件の原因を探っている。

実際統計上でも事件は増えていて、亡命者宿泊施設の襲撃は2015年には前年の5倍になった。研究ではとくに2つの地域に注目している。2015年の夏に亡命者敵対抗議があったDresdenのFreitalとHeidenauと、長い間右派過激主義の現場として知られているErfurterのHerrenbergだ。

 

次に、気になるその原因だ。研究によると、東ドイツの政治・文化的環境の中に外人敵視と右派過激主義の傾向があるとしている。その原因は複雑だが、歴史的な事情で外国人との付き合いに負荷があること、歴史的に国や政治に否定的な意見をもっている、あるいは意見をもっていないことなどが結びついた結果だという。

(この箇所は分かりにくかったが、要は外国人との付き合いの歴史が浅いことや、歴史的に国や政治への不信があることが関係しているようだ。ただし、具体的にDDR時代、統一後の「転換」時代、暴力事件が増えた2015年以降のそれぞれで、この傾向がいつ始まりどう変化したのかまではここに書かれていないので分からない。)

 

もうひとつ大事なのはこの研究報告では、政治家にも責任があると明言していることだ。Heidenauで反ファシズムデモへの拒絶があったが、それには「よそ者が自分たちに指図している」という意識が関係しているそうだ。

さらにその原因はCDUが優勢なザクセン州の政治文化が外国への防衛反応をはぐくんでいることだ。ザクセンの政治家は軋轢から目をそらし「右派の脅しに立ち向かうはっきりした言葉」を避けている、と研究で非難されている。政治家の責任逃れが事件をもたらしかねないというのだ。

 

一方でちゃんとした州もあり、チューリンゲンでは問題をちゃんと討論している。東ドイツでひとくくりにしないことが大事だと研究を委任した政治家のGleickeさんも言う。そして彼女が言うには、西ドイツからの善意の助言や教示は役に立たない。西ドイツは世界に開かれていると思われているからだそうだ。(つまり、反ファシズムデモと同様によそ者からの指図と思われるということだろう。)

Gleickeさんは「外人敵視と右派過激主義は東ドイツの社会の平和と経済発展への重大な脅威である。原因は容赦なくタブーをもうけずに解明し公表しなければならない。」と言っている。(もっともだけど、ここで経済発展を邪魔しないことも目的のように書いているのは引っかかった。「難民の安全」だけでよいだろうと思う。)

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属性でひとくくりにしないこと、「遅れている」という偏見をもって教えてやろうとしないこと。これらは後進国と呼ばれる地域での人権問題でも同様に重要だろう。

もう1つ別の記事を見てみよう。

Ostdeutschland - Das lange Ringen um Anerkennung

https://www.deutschlandfunkkultur.de/ostdeutschland-das-lange-ringen-um-anerkennung.1005.de.html?dram:article_id=429485

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タイトルは「東ドイツ - 承認をもとめる長い闘い」だ。

"新しい右派ポピュリズムが問題になるとすぐにドイツの東部が指さされる。分析は山とある。しかし足りないのは承認についての率直な議論である"と承認が大事だと言っている。承認(Anerkennung)というのは賞賛や評価とも訳され、仕事を頑張ったことや業績を人から誉められるようなことを言う。

最近出版されたらしい社会哲学の本も引用している。その本によるとイギリスやフランスよりもドイツでとくに承認は大事らしい。ドイツでは、人は他人からの承認があって初めて理性的な自己決定の主体になれるという。西欧であっても、ドイツはイギリスとかと比べるとそこまで個人主義的でないということかもしれない。

承認は誰にとっても大事で、ときにお金よりも大事だ。しかし、東ドイツ人は統一とその後の経済的問題で苦労したのにちゃんと認められていない、と著者は言っている。さいきんザクセン州の移民大臣のPetra Köppingがにたようなことを言って話題になっていたのでそれにもふれている。この記事もそれをきっかけに書かれたものだろう。

統一後は失業が増え、西側の経済力に依存するしかなかった。東ドイツの人の生活史は評価されず、誰も耳を傾けず、何か言っても「東ドイツ人の嘆き」と一笑に付されたという。喪失し依存をよぎなくされた失望が今も東ドイツ人にあるそうだ。

承認を得られなかったことが今の東ドイツの怒りの原因の一部だという。かといって今のケムニッツなどの事件は人種差別以外の何ものでもなく、怒りをよりによって配慮を必要とする難民に向けることは言語道断だと書いている。

右派の暴力の原因は他にもあると言われているそうで、旧DDR潜在的な外人敵視、またナチスの過去をほとんど乗り越えられていないことを筆者は挙げている。問題の切り分けが大事で、東ドイツ人の語りに耳を傾けて生活史を尊重する一方で、右派の暴力はきっちり批判すべきだという。

(最後のところは「この国家を拒絶する他の者たちを恐れずにそれにふさわしく扱うこと」と表現されていて極右勢力は反政府側と見なされていることがわかる。)

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