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記事紹介: Haltungsform ドイツの動物福祉の認証

去年くらいから妻に、「肉はHaltungsformの3か4を買ってね」と言われている。「その方が動物が幸せだから」と。

Haltungsform?何それ。そんなん前からあったっけ。

と思っていたけれど、どうやら2019年から食肉業界で導入された動物福祉に関わる認証だそうで、各スーパーの精肉のパッケージにその表示がある。


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Bioのマークは有機畜産で育てられた家畜だが、それとは別で動物福祉に配慮した飼育形態のグレードを1〜4で評価したものらしい。3や4はちょっと値がはる。

僕は、あんまり友達が多くない外国人の常として、身近な妻をドイツ人の代表であるかのように思っているが、たぶん当たらずとも遠からず。妻はそれなりに教育を受けた西部のリベラルなドイツ人の平均にわりと近いと思う。

その彼女が動物福祉に配慮しなきゃと急に言い出したということは、ドイツ社会でもその機運が高まっているのだろうと考えていた。ぼくは食品業界に興味を持とうとしているので一応自分で調べてみた。

 

 

この記事によると大手スーパーチェーンのAldiは2030年までこのHaltungsform(飼育形態)のグレード3と4の肉しか売らないように改革すると発表したらしい。

 

Kette will tiergerechter werden: Aldi verbannt das Billigfleisch | tagesschau.de

 

Aldi verbannt das Billigfleisch

Stand: 25.06.2021 14:45 Uhr

 

Aldiは安い肉を撤廃する

ディスカウントスーパーのAldiは2030年から最高の飼育形態でできた精肉だけを売ることを発表した。動物福祉連盟はこの前進を歓迎し、グリンピースは「一里塚になる」としている。

 

(中略)

飼育形態の重要性

Aldiと他の大手食料品小売業者は2019年に畜産認証マークの四段階制を導入した。この認証は食料品業界が独自に開発した精肉の分類で、1番下のグレードの「小屋飼い」が満たすのは法的要件だけだ。第2のグレードの「小屋飼い+」では家畜にとりわけより大きな敷地と追加の敷料がある。グレード3の「外気」では、動物にさらに広い敷地と新鮮な外の空気に触れることが保証される。グレード4「プレミアム」では、家畜はさらに屋外で走ることもでき、有機肉もこの段階に分類される。さらにたとえば家畜の飼料や敷料、健康チェックにも基準値がある。

 

よい飼育条件の肉は今のところ少ない

消費者および動物保護団体は何度も、高いグレードの畜産での肉がほとんど買えないと批判していた。たとえば去年の12月には、ハンブルクの消費者センターが市場調査を公表した。その結果によると、精肉供給の半分以上(51.1%)は、そのほとんどは豚牛で、畜産形態の最下段に標識づけされるという。このグレードは法定の最低基準に相当すると消費者センターは書いている。それによると最高基準の畜産形態4からは約10%しか供給されていない。

 

この分類は有機認証ではない

消費者保護派はこの4つ目のグレードに分類されることは有機肉の認証にはならない点を指摘している。肉は今まで通りに生産されることもあると消費者センターは書いている。またこの商取引の四段階認証は動物福祉ラベルでもなく、小屋の中のもっと多くの動物福祉にまで包括的に気を配ることはない。消費者センターの見解によると、動物福祉についての信頼できる情報提供のためにはほんらいなら、家畜飼育施設や食肉解体所での跛行、咬傷、内臓検査などの行動と健康に関する関連項目を体系だてて集計し評価しなければいけない。

 

(中略)

しかしまたAldiの攻勢は「政治の怠慢」も明らかにしている。畜産形態の3と4は早く法定標準にすべきである。

 

緑の党の政治家のRenate Künastは、この発表は連邦農業省大臣のJulia Klöckner(CDU)の不作為とCDUの農業政策の証拠だと評価した。CDU政治家らは食料品業界によってまたも「追い抜かれる」だろうとこの元連邦農業省大臣(Künast)は述べた。CDUとCSUはここで農業者と共に新しい展望を作り上げることをせず、現実から目を背けた。Aldiの計画は「明瞭な示唆という以上のもの」だとKünastは述べた。

 

 

 

Aldiはドイツの南北でAldi süd とAldi nordに分かれているが、どこにでもある有名チェーンだ。ここは品数は多くないし置いてあるものも日によってまちまちだけど他のスーパーよりも安い。思いついたようにちょっとした電化製品が置かれていることもある。一定した品揃えよりその時々で安く提供できるものを、というタイプの店だ。だから必要な品がはっきり決まってないときに行ったり、他のスーパーに行く前にとりあえず寄ったりする。

 

僕はスーパーでHaltungsformの3と4だけを選ぶようになってから、肉はあまりAldiでは買わなくなっていた。もともと品数が少ないので欲しい肉がグレード3や4で見つかることがほとんどないのだ。その代わりに他の大手スーパー、肉屋のカウンターや市場で買っている。他にもそういう人はいるだろうし、たぶん2019年以降Aldiの肉の売上が落ちたのだと思う。それでいっそ3と4だけ、と。

 

ドイツはヨーロッパの他の国より肉が安いらしく、ダンピングされているという話もある。食生活も、肉やチーズを採る量がすごく多い。僕が肉屋のカウンターで「300gくれ」と言って300gの塊を切ってもらうとちょっと怪訝な、ときには嫌な顔をされることがある。誰もそんな「細切れ」で肉を買わないのだ。僕の料理では300gでも多すぎるんだけどそれより少なく買う気にはならない。

若い世代でビーガン化が進んでいるのもドイツの特徴だそうだけど、むしろ年配の人たちがよくあんなに重たいものばっかり食べられるものだと思う。そう言えば妻が先日「週に1回ビーガン食にして」と言ってきた。僕は大歓迎だ。こういう制限レシピ考えるの好きだし。

 

 

 

下のサイトがHaltungsformの公式ページだ。

 

Home Haltungsform - Haltungsformen

 

 

「私たちについて」のところには、

動物福祉の改善は複雑な社会全体の課題です。それは価値を付与する一連の部門、つまり畜産業、食肉産業、最後に食品小売業、そして消費者も含めた事業活動全体がともに具体的な変化を起こさなければうまくいきません。

とある。

 

細かい基準も書かれている。たとえば豚について、グレード4プレミアムでは、

豚の肥育業の基準を定める綱領のための最低基準

 

必要面積: 法定(一頭あたり1.5㎡)の2倍以上の敷地。

飼育: 常に運動場に出られる小屋、または露地飼育。

敷料: 有機敷料、藁、もしくは同等の土台。

飼料: 遺伝子組み換えでない餌。餌の20%以上は自身の農地かその地域のものである。

プログラム参加義務: この飼育形態で登録されているプログラムへの参加。

動物健康モニタリング: 2022年からは食肉解体場での鑑定データの捕捉と資格をとって行う抗生物質モニタリング。それまでは抗生物質モニタリングを含めた事業への文書での動物健康モニタリング。

という感じ。鶏や七面鳥については品種の指定もあり、ブロイラーのような早く育ちすぎる品種は育てる速度を制限されている。

他にアヒル、ウサギ、牛について定められている。乳牛についても基準値が書かれているが牛乳パックにこのマークがついているのを見たことがない。何のためだろう。

Haltungsformには鶏卵用の雌鶏についてはとくに書いていないが、卵のパッケージには鶏の飼育条件について大きく表示があるのが常だ。良い順に(値段が高い順に)、Bio (有機)、Freiladhaltung (放し飼い)、Bodenhaltung (小屋飼い)がある。小屋の広さと有機かどうかは別の話に思えるが、鶏同士が近いと感染予防のために抗生物質に頼らざるをえなくなるらしい。つまり有機であれば自動的に飼育条件も良い。

 

Haltungsformには屠殺のし方や動物の扱い方についてあまり書かれていないが、屠殺の際に麻酔をしないといけないのはドイツの法律で決まっている。この点がコーランに基づくハラール肉と相容れないらしいということを以前このブログで書いた。

 

記事紹介:ドイツでのハラール

 

ハラールでも、方法は違えど殺される動物の安息を目指しているのは同じなので何か妥協点があればいいなと思う。日本でも一時、仏教的な慈悲にもとづいて食肉を控える文化があったし、動物福祉は現代やヨーロッパに限定されない普遍的な試みなのかもしれない。