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記事紹介:ドイツで自己決定法(セルフID)が否決。現行法の問題点

 

ドイツには、トランスセクシュアル法を改めようという登記上の性別やファーストネームを変更する手続きを定めた法律がある。これには問題点が多く、緑の党ドイツ自由民主党が「自己決定法」というより当事者の意志を尊重した法案を出していた。

しかし、今年の5月にこの法案は反対多数で否決。CDUやAfDだけでなく、革新政党SPDも多くが反対に回った。その際、トランスジェンダーの人を敵視する人々によるデマキャンペーンも事前に行われていた。

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記事紹介: 自己決定法、否決。ドイツの反トランスジェンダー - Ottimomusitaのブログ 

トランスジェンダーの当事者で政治学者のFelicia Ewertがインタビューに答えている。

 

 

Transsexuellengesetz: "Die Message ist: Eure Existenz ist nicht genug wert" | ze.tt

 

"Die Message ist: Eure Existenz ist nicht genug wert"

Von Muri Darida

21. Mai 2021, 10:52 Uhr210 Kommentare 

 

「これは、君たちの存在にはそれに足る価値はないというメッセージだ」

Muri DaridaによるFelicia Ewertへのインタビュー 2021年5月21日

 

(前略)

Felicia Ewert: …2日前に同性愛、インターセックストランスジェンダーへの敵意に反対する国際デーでレインボーフラッグを降っていたSPDまで反対した。彼らのモットーは「君たちが差別されているのを残念に思うが、この差別は維持します」だ。この件ではこの法律はトランス敵視を支持しているだけだ。それに今これは、自分たちは正しいと思っていいんだというトランス敵視の人への合図になっている。私はこのバカげた法律を自分で経験したし、だからこそ他の誰もそれを強いられないでほしいと思う。

 

ze.tt: その時はこの法的手続きは君にとってどんなものだったか。


Felicia Ewert: その手続きの前に私はとても不安だった。2016年の4月に私は区の裁判所で、自分のファーストネームと性別を訂正してもらうために法的身分変更を申請した。それから二人の専門家に委ねられた。問診はそれぞれに2、3時間かかり、私は知らない人たちに自分の人生を開示しなければいけなかった。私は子ども時代について話し、家族メンバーとともに職業も並べたて、他の人たち私がトランスであることについて他の人たちがどう思っているかを述べることになった。とくに微に入り細を穿ったのは過去の性的あるいはロマンチックな関係を聞く質問だった。


ze.tt: たとえば何を聞かれたのか。

 

Felicia Ewert: その人々はどの性別だったか。なぜ私がその他の性別の人と関係をもたなかったか。私の性生活は現在どのようであるか、性交は可能かどうか。これらの質問の背景にあるのはトランスの人は性生活を経験経験できないだろうという考えだ。なぜなら彼らは自分の体がそのようにあるのを拒否しているはずだから、と。しかしこれは、一部の人には言えるが、すべてのトランスの人に当てはまる仮定ではない。そのように私たちは証拠を出さなければいけないという重圧にはまり込み、性交が身体違和があっても良く感じられるようにするためにその最中に行なったことを、知らない人に詳しく晒さなければいけない。さらに専門家たちは私の髪、メイク、服、声域、身振りなど、私の立ちふるまいに事細かに気をかけた。専門家の一人は私の前ですべてを録音機に話していた。「申請者は女性的な服装をしている」というふうに。その状況で私は本当に心細く、されるがままになった気がして、ついにはそれだけ多くのことをこの二人の決定任せにしてしまっていた。同時に私は嫌な気持ちだった。「私がまだわからないことなのに彼らは今何を知りたいの」と思った。多くの人はこういう専門家は相談をしてくれていっしょに解明するのだと思うだろうけれど、じっさいは違う。彼らはただ聞いて、彼らがあなたが本当にあなたの言う性別だと思うかどうかを考えるだけだ。その際ステレオタイプにとらわれた見た目とふるまいが想定されている。


ze.tt: それからはどうだった?

 

Felicia Ewert: それから私は比較的2016年12月には書類をもらい、そこには「申請者のEwert氏は今後は女性に割り当てられることになる。彼は今後はFeliciaという名前をもつ」とあった。私の場合はそのとき合計1300ユーロかかった。法的身分と名前の変更にかかる費用の大部分はこれらの専門所見ために必要になる。この手続きは非係争とされている。つまり自分で費用をもたなくてはいけない。もちろん資金の理由からできない人や、その重荷を負いたくない人もいる。しかし、不正確な文書を持ち歩くのも同様に負担だ。たとえば別の性に割り当てられる名前が書いたクレジットカードをもっていると、レジ係や誰にでも説明しなければいけない。


ze.tt: トランスセクシュアル法は法的身分変更後もトランスの人に関わるのか。

 

Felicia Ewert: まず大事なのはトランスセクシュアル法には法的手続きしか記述されていないということだ。つまり、扱われているのは訂正、あえて訂正と言うが、名前と性別登録の訂正だ。医療的な介入はこれとは関係がない。しかしこの法律は法的身分変更後も私たちの生活に食い込んでくる。たとえば両親と子の関係というものについてだ。つまり子どもが生まれたときに出生証書に親の性別分類を書き留めなければいけないということだ。なので私は自分の現在の出生証書に女性での記入をしているにもかかわらず、私の子どもの出生証明には存在しない男が父として登記されることになる。この慣行に反対する訴訟が連邦裁判所であった。訴えは棄却された。それは、子どもに二人の母親や二人の父親がいる事態は、証明に片方の親がトランスセクシュアルであることを明らかにしなければいけないため、許容できないという理由だった。これはまったくばかげている。私が自分の子どもの出生証書を見せるたびに毎回自分をさらさなければいけないことになるからだ。この理屈にしたがえば子どもは差別から守られない。


ze.tt: 代替案になりえたのは自己決定法だった。これはどの程度その名の通りのものなのか。

 

Felicia Ewert: トランスセクシュアル法の擁護者は、自己決定法を通じて未成年が容易に手術的介入を受けることができると思っている。これはたわ言だ。自己決定権で規定されているのは、ファーストネームと性別登録を行政手続きの壁を減らして訂正できるようにして少ない費用で早く行うようにすることだけだ。今のところ手続きにこれほど時間がかかっているのは申請を厳格で綿密に審査しているからではなく、役所の過負荷のせいで申請がいつまでもデスクに置いたままになっているためだ。さらに自己決定法にもとづくと私がさっき話したような両親と子の関係も廃止される。またこれはすべてのトランスの人が医療的な備えを整える権力を保障する。


Felicia Ewert: これが施行されればトランスの人は診断がある場合は治療の費用立替を請求できるようになる。今は健康保険は医療的所見や診断にもかかわらず拒否されるのが現状だ。自己決定法ができれば、14歳以上の青少年も自分で意思表示文書を作成できる。しかし、これは未成年者が簡単にホルモンやホルモン遮断薬を手に入れることができるという意味ではなく、両親が反対しているとしても、原則として彼らの名前と性別を表明する機会があるということだ。

 

ze.tt: すでに6度、連邦憲法裁判所はトランスセクシュアル法の個別規定に違憲の宣告をしている。なぜこの法律の廃止に反対する人がこれほど多いのか。


Felicia Ewert: 抵抗活動がこれほどうまく行っているのは絶え間なく危機感を演出しているためだ。ソーシャルメディアでは、自己決定法反対派の主な主張が子どもの保護や暴力防止を根拠にしているのがよく見受けられる。子どもは今列をなして「性別を変えよう」としている。子どもたちは自分の両親がトランスであることには耐えられないのだと。たくさんの男性が気づかれずに保護スペースに入ってきて女性に暴力を加えると主張している。Beatrix von Storch[AfDの政治家]は例として女子刑務所を引き合いに出した。あたかも今シスジェンダーのある種の人が、日常のあらゆる場面で変更した身分証明書をもって歩き回るために役場の法的身分課に行きたがっていて、いつでも自己表明するに違いないとでも言うように。


ze.tt: カミングアウトしていないトランスの人に言いたいことはあるか。


Felicia Ewert: あなたは一人ではない。どうか耐えてください。